【読書感想/書評】 石垣りん詩集 角川春樹事務所 

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この潔くて、かっこいい詩

今日紹介する本は「石垣りん詩集」

目次

ジャンル

詩集 になります。

一度は国語の教科書で読んだことがある人が多い詩人「石垣りん」の詩集となっています。過去発表された詩集4冊を中心に53編、未刊詩詩編から2編の計55作品が収録されています。

後述しますが、石垣りんさんは1920(大正9)年から2004年を生きた詩人です。その時代の日本と言えば、太平洋戦争から戦後の復興期になります。

戦前から戦後、そして平成まで生きて、戦争後の貧しい日本、変わりゆく街並み、社会、生活。その中での家族とのわだかまりや離別など、石垣りんさんが歩まれた激動の人生の中で感じたことを赤裸々にかつ、潔く大胆に歌った詩集となっています。

さまざまな困難や理不尽な状況が訪れようとそのことをまっすぐ向き合った詩に石垣りんさんや当時の女性の生き様を感じる詩集となっています。

著者

引用元:あなたの静岡新聞 伊豆ゆかりの詩人 石垣りん 人柄や作品の魅力に迫ります(https://www.at-s.com/news/shittoko/1114596.html)

石垣 りん

経歴/職業

1920(大正9)年2月21日 東京赤坂で長女として生まれる。
1924年 母死去
以後、3人の義母、3人の妹、2人の弟を持ち、死別や離別を経験する。
1932年 赤坂高等小学校に入学 この頃から詩に親しむ
卒業後、日本興業銀行に事務見習として14歳で就職。
後に調査部・考査部・事務部でも働き、戦後はメーデーや職員組合活動に参加しつつ一家の生活を担った。

1938年 女性だけの詩誌「断層」を創刊
1945年5月 空襲で家が全焼し、家族が離散
1945年6月 家族6人の品川の借家に集まる
1951年 選詩集『銀行員の詩集』に4編が掲載され、転機となる。
1968年 詩集『表札など』でH氏賞受賞
1970年 大田区南雪谷のアパートに転居 終の棲家になる
1971年 『石垣りん詩集』で田村俊子賞受賞
1975年 銀行を定年退職
2004年 心不全のため逝去

経歴から分かるように石垣りんさんは激動の時代に生まれ、複雑な家庭環境の中で幼少期から青年期を過ごされました。家出したくなるような状況でも、心が折れるしかない状況の中でも詩と共に不条理な困難に向き合って、小学校を卒業してすぐに銀行員として働き家族を支え、老年になっても、変わりゆく社会や価値観の中でも変わらずに詩を編んで生きた1人の等身大の女性の姿を本書「石垣りん詩集」を通しても感じられます。

あらすじ

半身不随の父が 四度目の妻に甘えてくらす このやりきれない家 職のない弟と知能の遅れた義弟が私と共に住む家 「本書:詩『家』」より

本書の詩『家』より、このような石垣りんさんが過ごした家庭環境を表した一節があります。巻末に作家の中島久枝さんのエッセイがあるのですが、中島さんはこの一節を読んで、どきりとさせられたと言っています。私もそうでした。

前述のとおり、石垣りんさんは激動の時代を生きた方でしたが、それと同時に複雑な家庭環境で育ち、生活をされていました。本書に収録された詩『村』は石垣りんさんの母をテーマに歌った詩となっていますが、その一説に『物心ついたとき 母はうごくことなくそこにいたから 母性というものが何であるか おぼろげに感じ取った』とあります。4歳で母を亡くし、14歳にはすぐに銀行員として就職して家庭を支えるようになるというのは並々ではない心労があったと思います。

石垣りんさんの意思とは無関係に訪れる様々な困難、家庭の困難、仕事での困難、戦中・戦後という時代の困難がたくさんありました。どんな人でも心が折れて家出もしたくなりますし、何もかも忘れてしまいたい、と思うことも幾度もなくあるでしょうし、石垣りんさんもそのように思われて過ごされてきました。

しかし、石垣さんはその困難から目をそらして逃げるのではなく、詩としてその困難を赤裸々に語り、また自分の辛い思いまでも赤裸々に語って、真摯に向き合って過ごされてきました。

その言葉は時に人生の重みの分だけ一言でも深く、時に様々な困難を経験されたのか分からない軽快な口調で語られます。

「溺れる 溺れる 溺れて掴む おおヒューマン!(詩:『藁』の一節より)」

この石垣りん詩集は前述のとおり、激動の時代に生まれ、複雑な家庭環境の中でも、変わらずに詩を編んで生きた1人の等身大の女性の人生が詰まった一冊だと感じました。

また、戦後に「キャリアウーマン」と言った新しい女性の価値観も生まれる中で、その時代の働く女性がどう思っていたのか、「地球が青かった」と言ったとき、どう感じたのか、と言った当時の歴史、時代の変遷も感じることができることができる詩集だと思います。

この詩集は特に女性にオススメです。時代は違っても、今の女性も共感するような詩も多く、日々の生活の中で感じる苦痛や違和感、それを機微に感じ取り、赤裸々に歌う姿に力をもらえると思います。

後書きには石垣りんさんと生前お逢いされた作家の中島久枝さんのエッセイがあり、石垣りんさんのその人となりをまた深く感じられる詩集になっています。

感想

私はこの詩集を手に取る前は、石垣りん….国語の教科書で聞いたことあるかも、程度なおぼろげな印象でした。著名な詩人ですが、事前の記憶はほぼなしでした。

ひと昔まえの著名な詩人の詩集に興味があり、この本を読むようになったのですが、読んでいるとまるで当時の歴史を体感できるような赤裸々に歌われた詩が多く、その時代を生きた一人の人生が凝縮された詩集だと感じました。

私が読んでて特に面白いと感じたのは「不出来な絵」「家」「子供」「土地・家屋」「摘み草」「溶けてゆく」「木」でした。「不出来な絵」では、時代は違えど、あ~私もそうだなと共感するところが多かったです(笑)。
また、詩を読みながら、戦前、戦後は教科書ではさらっと語られるけど、その中には並々ならぬ困難があり、特に石垣りんさんは更に多くの困難を経験された方だったんだなと感じました。

書評すると言いながら、正直あれこれと書評して紹介するより、「読んだら分かる」という1冊です(笑)
詩に込められた心の機微は詩を読まないと紹介しきれないなと感じました。それほど心の機微を感じ取って言葉にするのは簡単にも見えますが、本当は難しいことだと書評しつつ感じました。

「自分の心を一番よくわかるのは自分」ですが、表現することは難しいことです。特に、自分の見舞われている困難を赤裸々に語るのは恥ずかしくもあり、大変でもあります。しかし、それを潔く詩的に表現した石垣りんさんの言葉を通して、共感できるところがあり、不条理にも訪れる困難を迎え入れて乗り越えていった姿に元気をもらえる1冊だと思いました。

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こちらも女性の詩人が歌われた詩集になっています。この本の著者の柴田トヨさんも激動の時代を経験されており、92歳から詩を始められた詩人です。石垣りんさんとはまた違った視点で、自分の人生に対する詩をたくさん歌われています。

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