死はなんでもないのです。
-Death is nothing at all-
今日紹介する本は「さよならのあとで」
ジャンル
詩 になります。
詩集というわけではなく、一遍の詩がそのまま1冊の本になっています。所々に挟まるイラストが詩の雰囲気や余韻を感じさせてくれる1冊となっています。
著者
詩
ヘンリー・スコット・ホランド (Henry Scott Holland)
経歴/職業
1847年イギリスのヘレンフォード生まれ。スタンフォード大学卒業。
1910年から同大学の神学欽定講座教授を務めた神学者。
1918年没。
この詩の著者ヘンリー・スコット・ホランドは、英国教会の神学者であり、経済や貧困、戦争などの社会問題について思索した哲学者でもありました。
絵
高橋和枝
経歴/職業
1971年神奈川県生まれ。東京学芸大学教育学部美術科卒業。
イラストレーター、絵本作家。
代表作品
上記の代表作品のような絵本を描かれていたり、本書「さよならのあとで」のように押絵を出がけた作品も数多くあるそうです。今回の本で初めて作品を拝見させていただきました。
あらすじ
この本の末尾に発行人(※著者ではない)の「あとがきにかえて」にこう書いてある通り、本書は「死別」を題材とした詩になります。
この詩の特徴は故人を哀悼する詩ではなく、自分が故人となる前に大切な人へ向けた詩となっています。
詩そのもので見たら、短い詩なのですが、所々に描かれた押絵が一行一行をより深く味わえるようになっています。
詩の著者はキリスト教徒でイギリス人というのもあり、文化的に死の感覚が違うのかなと感じそうですが、そうではなく、日本人でも読みやすく、味わい深い詩でした。
葬儀や哀悼式など、海外の故人を偲ぶ多くの場で、この詩が読まれているそうです。
感想
私自身もよく詩を書いているので、海外の詩にも興味があったのが軽い気持ちで手にとるようになりました。
読んでみるとテーマは「死別」と重いものでした。
しかし、そのテーマとは対象的に詩の著者が残される人たちに向かう愛が込められた寄り添う詩だと感じました。
最近、私自身もお世話になった人の死別を経験しました。また同時に、自分自身が急死に一生を得る出来事にも遭うようになりました。それらを経験した時、気丈に振る舞っても、人は大切な人の死を前にして、力が無くなるし、自分の死を前にしては、自分のことで精一杯だと感じるようになりました。
そんな死を前にして、詩の著者は残される人たちに優しい言葉で語りかけ、大切な人たちが今まで通りに変わらないでいてほしいと願う姿に感動しました。
「死」とはなかなかデリケートな話題ですので、相談しにくいものです。
もし、大切な人の死を前にした時、自分の死を前にした時、誰にも告げることができない苦しい思いがある時、力をもらえる一冊だと思います。
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